「アンジェロ」
キスをする代わりに両手を握った。
自分の体温が、アンジェロにも届けばいいと思って。
アンジェロの寂しい気持ちと、自分の寂しい気持ちが手と手を通して繋がって、溶け合って…
二分の一になればいいと思った。
「アンジェロ、俺はお前の友達…。
寂しくならなくたって、いい」
とくん、とくん、とアンジェロの血流を手のひらに感じる。
天使の鼓動が心地よい。初めは憎かったはずなのに。
あぁそうか、天使にも弱さがあることがわかったから、完璧な存在にも醜さがあることを知ったから、自分と似た寂しさを抱えているから…
受け入れてもいいと思ったんだ。
するとアンジェロは、なにかを甘受したように穏やかに微笑えんで、こう訊いた。
『でも、今まで僕が憎かったんじゃないの?リュカ、』
そのどこか諦めを含んだ口振りは、まるで今まで隠していた「知っている」という事実を明白にしているようだった。
「やっぱり、お前…」
『知ってたよ』
情けなく笑うアンジェロの表情に、初めて本物の彼をみた。
「知って、全部…?」
『僕のママと君のパパ―――その子供が堕天使のバスチアンだってこと?』
当たり前じゃない、とアンジェロ。
『君がいつも絵に描いていたのは、綺麗な白い羽根の天使。あれはバスチアンでしょう』
嗚呼、なんてことだろう。
この天使はまるで人の心が読めるみたいに、初めから全てをわかっていたのだ。


