「ただいま、」
いつもは帰宅するとすぐに駆け寄ってくるバスチアンの姿がない。
リュカは首を傾げてキャスケットを拭ぐと奥の小部屋を覗きにいった。
「…バスチアン?」
やはり絵を描いていた途中だったのか、バスチアンはキャンバスの前に座って眠っていた。
その微笑ましい寝顔にふと笑みが零れて、リュカは毛布をとってきて彼にかけた。
(…珍しいな、)
疲れて眠るほど熱心に何を描いていたというのだろう。
そういえば描いてる絵を見られたくないと必死に拒絶していたっけ。
(…なに描いてんだ?)
今、弟は眠っている。
そう思ったら無性にその絵をこっそり見てやりたいという気持ちがリュカの中で頭をもたげた。
寝ているのをいいことに勝手に見るなんて良くないとは思ったが、好奇心には抗えず…
「バスチアン、ごめん」
起こさないようそっと囁くと、キャンバスのページを捲った。


