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(…満月だ)
仕事からの帰り道、橋を渡ながら空を見上げた。
天使はどこに住んでいるんだろう。死んだ母さんのいる天国はどこにある?
満月よりも、ずっとずっと向こうにあるんだろうか。
夜空を見上げていると、そんなとりとめのない考えに想いを馳せる。
生暖かい夜の風邪がふいて、体を心地よく包む。
(…アンジェロの父さんか)
ふと思い出してポケットの中からオーロラピンクの石を取り出す。
これを使って、もう一度全てを戻せたら…。死んだ母さんを生き返らせて、父さんも…
(…父、さん。どこにいるの?)
自分たちを置いて一体どこに居るの?
今だって、バスチアンと2人で居られれば幸せだ。だけど、父さんも母さんも戻ってきてくれたら…。
(…そしたらバスチアンには会えなかったことになんのか)
ただ、普通に幸せになりたい。
温かい家庭で。クリスマスには家族揃って食卓を囲んで。
朝起きたら母さんがご飯を作って待っていて。
悪いことをしたら父さんに叱られて。
買ってもらったおもちゃを取り合って兄弟で喧嘩をするんだ。
―――寂しいんだ、俺
アンジェロの言った通りだよ。


