『リュカ…』
夕食の片付けをしていると、アンジェロがそっと話しかけてきた。
『リュカにこれを見せてあげる』
そう言って徐にアンジェロが取り出したのは光り輝く綺麗な石。
「すげぇ…」
触るのも見るのも躊躇われるくらいに神秘的なそれは彼の手の中にあった。
オーロラピンクをしたそれはまるで彼の心臓のようだなんて突飛な想像をしてしまう。
『この中にね、僕のパパの全てが入ってるの』
アンジェロは感情を込めることなく、たんたんと言葉を紡ぐ。
アンジェロの父親――初めて彼の口から聞くそのワードに皿洗いをしていたリュカの手は止まる。
『物凄い力を感じる。僕はパパが好きだった。でももう
―――いらないんだ』
物憂げにそう呟いて差し出された手。
確実に、リュカにたいして差し出された手。
『これ、リュカが持っていて』
心臓。
どうしてそんなふうに感じたのかは解らない。
けれど生きているみたいに存在感のある石を差し出されて、リュカはその印象を強烈に感じた。
「お前の…」
父親の全て。その意味がリュカには理解できなかった。
もし父親のものならば、なぜ本人がこれを所有しないのだろうと。
「これがあれば…。」
『………』
「これがあれば何でもできるのか?」
その魅惑に取り憑かれるようにして食い入るように見つめ問うリュカ。


