『心で泣いていたでしょう?』
金色の睫毛を2度瞬かせて、クリアブルーの瞳は問う。
(…心、で、)
サーシャには解らなかった。心で泣くというのがどういうことなのか。
――それにどうして、心の泣き声がアンジェロには聴こえるの?
『…サーシャの心は寂しい、寂しい、って、泣いてたよ?』
彼はサーシャの隣に腰掛けて、彼女の右手をとった。
『寂しくないように、僕が一緒に遊んであげる』
そう言った真紅の唇は優しく笑って、ぎゅ、と手に込められたアンジェロの体温は温かかった。
11月24日。
―――アンジェロが初めて、この部屋を訪れた日。


