キミニアイヲ.

はやる気持ちを抑えながら、莉子は人の波を足早にすり抜けていく。


その時になって初めて気付いた。



自分はこんなに彼に逢いたかったんだ、ということに──。




ロータリーの喫煙所には、お馴染みのスーツに薄手の黒いコートを羽織った楓が立っていた。


莉子に気付くと煙草を灰皿に押し付けて、色気のある微笑みで彼女を迎える。


この魅力的な笑顔を見るたびに、莉子の中で楓の存在は少しずつ、確実に大きくなっていく。



「悪いね、急に呼び出して」


「…ほんと、もうすぐ終わりだと思ってたのに」



──うわぁ…!!

なんて可愛げのないことを言ってんのよ、この口は!?


こんなに逢えて嬉しいくせに……


莉子は心の中で、深く、深く後悔した。