「歳は?」
「26になったとこ」
「家はどこ?」
「郊外のマンションに一人暮らし」
楓にその気がないと分かって、莉子は一気に緊張感から解放された。
なぜ自分と話をしたいのかは謎だったが、莉子はとにかく楓のことを知りたくて、ウェルカムドリンクを飲みながら質問攻めをした。
「家族は?」
「歳の離れた兄貴が一人と親父と……母親は8年前に死んだ」
──え……死んだ…?
言葉を失って楓を見ると、特に表情を変えずに淡々と話し続けていた。
「俺が高校三年のとき事故に遭ってね。
それからだったな、俺ら家族の関係が悪化していったのは」
グラスの中の氷がカランと音を立てる。
楓は口元だけ冷たく笑っていた。



