「ここで話してるのもナンだから行きますか」


「へっ…どこに?」


「ホテルに決まってるじゃん」



さも当たり前のように楓の口から出た言葉で、莉子は思い出したようにはっとした。


そう、今は仕事中なのだ。


──あたしは今からこの人を相手に……??



「……無理!!」


「?」



──だって、いつも来るのはオヤジばっかりだし…

こんな若くて格好良い人なんて相手したことないもん!絶対無理!!



さっそく歩きだした楓の後ろで、莉子は頭を横に振りながら一人葛藤していた。


そんな莉子の様子に気付かず、どんどん歩みを進める楓。

前の信号に差し掛かると、莉子は少し遠慮がちに隣に並んだ。