ポケットに片手を入れたまま向かってくる、スラッとした細身の男。


それは紛れもなく、楓だった。



莉子を見るとあの時と同じように、にこりと笑いかけた。



「こんばんは。また逢えたね」


「なっ…な、なんで…!?」



驚き過ぎて噛みまくる。


──まさかこんな所で逢うなんて…!!



動揺している莉子をさらに驚かせる一言を、楓は何気なく言った。



「あぁ、“愛莉ちゃん”と逢うのは初めてか」


「えッ──!?」



──なんで!?

なんでその名前知ってるの!?


まさか…まさか……!?



「アナタ…“松永 楓”…!?」