「お待たせ」

「わっ!」



突然、ほどよく温かいミルクティーの缶が頬に少し触れた。


後ろを振り返れば

黄緑色の瞳を細めて、優しく綺麗に笑う、愛しい彼の姿がある。



出逢った頃より、髪の毛は少し長めになった。


黒とグレーのストールは、二年経った今でも使ってくれている。


そして、左手の薬指にはプラチナのペアリングが輝く。



「楓!遅いよー、何してたの?」


「悪い、莉子に見惚れてた」


「………。」



妖艶に笑う楓に、莉子は呆れ顔。



「またそーいう都合のいい嘘ばっかり言って…」


「嘘だけど嘘じゃないよ。莉子はいつも可愛いから」


「はいはいっ」



ミルクティーを受け取ると、適当にあしらって歩きだす莉子。


だけど、こんな冗談を言い合えることが本当は嬉しかった。