キミニアイヲ.

深いため息をつきながら、フラフラとした足取りで部屋に向かった。



「……?」



部屋のドアの前に、男が一人立っている。

…というか、困ったように頭を掻きながらうろうろしている。


明らかに不審な人物に、莉子は警戒しながら少し近付いてみる。



すると、気配に気付いた男が振り返った。



「……莉子…!」



その男は莉子が一番よく知っている人物──



「お父さ……!!」



不覚にも、思わず“お父さん”と呼びそうになって口に手を当てた。

以前より痩せこけて、不健康そうな顔に無精髭を生やしている。


その姿を見ると、昔の記憶を一瞬のうちに思い出して身震いしてしまう。