放心状態の莉子に雪音が寄り添う。
瞬哉も一言も発することなく、俯いて頭を抱えていた。
もうすぐICUの面会時間になる。
看護士に“面会出来るのは家族だけ”と言われ莉子は一瞬戸惑ったが、
雪音がすぐさま『この子が家族です』と言ってくれた。
こんな時に、自分と楓は赤の他人なんだということを思い知る。
何もしてあげられない。
こんなに好きなのに
こんなに苦しいのに
嘘をつかなければ傍にいることすら出来ないなんて──…
自分の無力さを感じながら、莉子はICUの扉の前に立つ。
早く楓に会いたい。
だけど、その姿を見るのが怖い…
相反した気持ちを抱いたまま、莉子は恐る恐る中へと入った。



