キミニアイヲ.

「あとは頼む」



ゆっくり歩きだした毅は、莉子の前を通り過ぎて待合室の出入口に向かっていく。



「…どこへ行くの…?」



弱々しい莉子の声に少しだけ振り向くと、


「俺もけじめをつけてくる」


とだけ言って、毅は静かにその場を去っていった。



楓を刺した男は、まだ事務所に拘束していた。

男を警察に突き出せば、同時に毅の組の悪事が暴かれ兼ねない。


いつもなら、こういったトラブルは内密に処理していたのだが…

今回のことで、毅は考えを改めたらしい。



毅が言う“けじめ”の意味。


それは、犯した罪を償うということ。


毅も変わろうとしているのかもしれない、と莉子は思った。