それは一瞬の出来事だった。 ──ドサッ 男が尻餅をつくように後ろに倒れた。 顔はさっきまでの殺意に満ちた表情から、驚きと恐怖が入り混じったような表情に変わっている。 「……ひっ…あ…!!」 「……!?」 何か恐ろしいモノを見たかのように、口を開けたまま声が出ないようだ。 みるみるうちに血の気がひいて青ざめていく顔。 そして、血まみれの両手と床に転がったナイフ。 「──っ…!?」 ふいにわき腹辺りに感じる強烈な痛み。 楓の手も 白いシャツも 絵の具のように綺麗な赤で染まっていた。