「俺、ラブホの仕事辞めようと思うんだ」
早くも梅雨入りした6月の初旬。
検診の前日、寝る前に突然楓が言ったことに驚き、莉子はつむっていた目を開いた。
「え…なんで?」
「なんとなくさ、子供の気持ちになって考えてみたら、親がラブホの社長なんて嫌かな〜と思って」
莉子に腕枕をしている楓は、目をつむったままだが口元は少し微笑んでいる。
「今はまだいいけど、大きくなって作文とかで“お父さんはラブホテルで働いてまーす!”なんて言われたくないじゃん?」
「あははっ、そうだね」
莉子は思わず笑ってしまったが、楓が子供との未来のことを考えてくれていることがとても嬉しかった。



