キミニアイヲ．

「楓クンに手繋がれただけで未だにときめいてる莉子が羨ましいわ…」



『やることはヤってるくせに』

という言葉が喉まで出かかっていたが、雪音はそれを飲み込んだ。



「贅沢な悩みですね」


「へ？」



目線を上げると、莉子はふんわりと柔らかな笑顔を浮かべている。



「それはもう家族と同じように思ってるからじゃないですか？

赤の他人をそんなふうに想えるなんて、雪音さん達が心底愛し合ってる証拠ですよ」



莉子からそんな恋愛の達人のようなフレーズが出てくるとは思わず、雪音は目をぱちくりさせている。



「莉子……アンタ変わったわね」


「？」


「このあたしがまさか莉子に諭されることになるとは思わなかったわ」



そう言って二人で笑った。