キミニアイヲ.

ほんの1、2分で電話をし終えると、男は残念そうにため息をついた。



「俺これから会社へ戻らなきゃいけなくなっちまった。悪いけど、心中の話はまた今度ね?」



莉子を抱いていた腕を離すと、肩にぽんっと手を置く。


(助かった……)


無理心中(?)の話が流れて、莉子はほっと胸を撫で下ろした。



「そういえば、君の名前は?」


「えっ!?あ…えっと、莉子…」



突然聞かれて戸惑う。

いつぶりだろう、本名を誰かに教えたのは……。



「莉子ちゃんか、いい名前だね」



名前を誉められても、あの父親が名付けたのかと思うといい気はしない。


そもそもお世辞かもしれないが。