キミニアイヲ.

沈んでいく夕陽を目に焼き付けて、ゆっくり目を閉じた。


その時──…



「お姉さん、飛び込むのー?」



(……は?)



さっきまで何も入らなかった耳に、突然響いた邪気のない声。


ぱっと目を開けて、声のする方を振り向く。



そこには、濃いグレーの細身のスーツから青紫色の光沢のあるネクタイを覗かせた男が、煙草をくわえて立っていた。


茶色の髪は無造作にセットされていて、斜めに流された前髪からは黄緑色の瞳が莉子を見据えている。



──すごく綺麗な男の人……


顔だけでなく、煙草を吸う仕草や立ち姿にも一瞬で魅了される。


それが莉子の第一印象だった。