キミニアイヲ.

「……こんなことしたって無駄なんだよ…」


重苦しい空間の中で、ため息混じりに毅がぼそっと呟く。



「紅葉の心は此処にはなかったんだから」



予想外のフレーズに、莉子も楓も少し驚いて毅を見た。


毅からは怒りや憎しみの色は消えていて、ほんの少し悲しげな瞳でどこかを見据えている。



「知ってたさ、紅葉が前の旦那を忘れられないことくらい…」



『それでも俺は紅葉を愛していた』


そう迷わず言う毅を見て、莉子はこの男を少し誤解していたかもしれないと思った。



ただ好きだっただけじゃない。


紅葉の捨てられない想いも、自分には向けられていない愛も、全部含めて彼女を愛していたんだ。