キミニアイヲ.

楓は背中に伝わる重みとぬくもりを感じながら、身体に回された手を見つめる。

しなやかで温かい“生きている”手を。



今までずっと、母の死に囚われたまま生きてきた。

今でもあの細くて綺麗な、青白い死人の手を離せずにいる。


いや、離してはいけない気がしていた。



──きっとこれから先も、俺は俺を許すことは出来ない。


だから“許してくれる誰か”が必要なんじゃないか…?



自分に足りないものが何なのか、少し分かった気がする。


教えてくれたのは、自分と同じように満たされない女の子。


今この手をとったら、二人の運命が変わるかもしれない。



──この“生きている”手をとってもいいだろうか…?

母さん──…