「……莉子?」
莉子の身体は、勝手に楓の背中に吸い寄せられていた。
優しく、でもしっかりと、その寂しくて温かいぬくもりを抱き締める。
「違うよ、楓……
資格がないんじゃない…、幸せになろうとしないだけなんだよ」
目蓋の裏が、じんわりと熱くなってくる。
「十分自分を責めたでしょう?
もう許してあげてよ……楓自身を」
“お前なんかに何が分かるんだ”って言われるかもしれない。
それでも伝えなければと思った。
あのキャンドルのように、彼の心の闇を優しく照らす小さな光になって
その心ごと抱きしめてあげたい……そう思った。



