キミニアイヲ.

「兄貴に身を委ねてしまった母さんの気持ちも、今なら分かる気がする。

もう会えない“風汰”と兄貴を重ね合わせて、心にぽっかり空いた穴を埋めようとしてたんだろうな…」



だけど、紅葉の心は風汰で出来ていたようなもの。

その傷は風汰でしか癒すことは出来ない。


彼女が本当に愛していたのは、ただ一人だった。



愛を知らないはずなのに、莉子は紅葉のことを想うと切なくて堪らなかった。




「辛い想いばかりしてたのは俺じゃない…。母さん自身なのに…」



楓は手を強く握りしめ、唇を血が滲みそうなほど噛み締める。


気持ちを理解してあげられなかった後悔と

守ってもらうばかりで何も出来なかった自分の幼さ、無力さを戒めるように。