キミニアイヲ.

『楓…辛い想いばかりさせてごめんね……』


そう言って閉じた瞳からは、ガラスのように綺麗な一粒の雫が流れた。




「…それが最期に聞いた母さんの言葉──」


そこまで言って、楓は少し首を横に振る。



「…いや、本当に最期に微かに聞こえたのは…
無意識のように呟いた『風汰』って名前だった。

親父でも、兄貴でもなく“風汰”って──」



少し俯いて話す楓の瞳は何も映らず真っ暗で、さっきまでの温かさは全く感じられない。



「その時に初めて気付いたんだ。
母さんが愛してたのは、生涯で“風汰”だけだったんだって」