仕事を終えると、二階建の小さなアパートへ帰る。
ここは莉子のように帰る場所がない人達が身を寄せている、いわゆる社員寮のようなもの。
帰るといつも真っ先に向かうのは洗面所。
すぐに手を洗って口をゆすぐ。
一日に何人かの男を相手にしたこの手と口が、とても汚らわしいものに思えて仕方ない。
潔癖症かと思うほど丁寧に洗うことで、今日一日の出来事も洗い流してしまえる気がする。
──こんなことしたって、綺麗な自分に戻れるわけじゃないのに。
莉子はため息をつきながらベッドに倒れこんだ。
「はー…疲れたぁ…」
それは無意識に出た言葉だった。



