キミニアイヲ.

「せっかくだから、この時期ならではの場所へ行こうか」


「……えっ?」



恥ずかしそうに両手で頬を包んでいた莉子は、そのままの状態で楓を見る。


意味深な笑みを浮かべた楓は、返事も聞かずに車を発進させた。



──まだ、一緒にいられるの…?

どうしよう、嬉しい──。



今度こそバレないように、にやけそうになる口元をそっとマフラーで隠した。




窓から流れる景色を眺める。

ステレオからはしっとりした洋楽が控えめに流れてきて、とても心地よい。



このまま誰も知らない世界へ行くんじゃないか──


そう思うくらい莉子には現実味がなく、夢を見ているようにふわふわした気分だった。