ため息をついてしまうのは、千帆の気持ちになってしまっているからだ。

同調しすぎるのは禁物だと言うのに、近頃はかなり狂い始めている。


狂う。

それも千帆の影響なのだが。


しっかりしてくれ。気をつけろ、千帆。


 恋愛は人を揺らし過ぎる。限界などは考慮されない。それが破られるまで、ラインの設定がわからないからだ。

 もちろん、大きな飛躍の原動力になる場合もあるのだが、逆にすべてを引きずり破滅に堕ちていくことにもなり得る。

そして、失うものは音楽だけに止まらず、その時持つものの大半だという悲劇。

 手を出すなとは言わない。

他のものすべてを切り捨てて、音楽だけに生きろなどとは考えない。

これを一番にしろとも思わない。

願いはもっと単純に、ただ一つだけ。



それだけは、失われることのないように。