噂を聞いてから一度見に行こうと思いながらもできずにいたのだ、今日まで。

知らない方が幸せでいられるんじゃないかと思っていたというのもある。

例えば素晴らしい美少女を目の当たりにしてしまい、落差を感じて裕明の前には出られなくなってしまっては恐ろしい。


 とりあえず。

想像していた美少女、とは違うことは確か。


 千帆はのぼせたような頭でそんなとりあえずを思っていた。

容量オーバーだ。

裕明のピアノが頭の中では止まらずに流れ続け、奏の存在は膨れて圧し掛かる。

そして何よりも回り続けている第一の質問は。



『たーちゃん』て、何?