あたしはズルッと椅子から転げ落ちそうになった。な、何なのよ、これは!あたしはこれでもかってスピードでキーボードに文章を打ち込んだ。
『あ、あんたね。一体どこでそんな下らないギャグ覚えて来るのよ?』
 ああ、でもこれは愚問だった。こいつインターネットに直接入ってどこへでも行けるって前に言ってたもんな。東京にあるメイド喫茶とかのホームページ回って来るぐらいわけないか。あたしは続けてキーボードに打ち込む。
『とにかく、その変な格好なんとかしろ!』
 するとお雪はペタンと座り込んで、よよ……と泣きだす仕草をした。ご丁寧にも手に持ったハンカチを口で噛みしめている。
「ひ、ひどいわ……それじゃ何のためにわたしは……」
 その次のセリフであたしは今度こそ完全に椅子からずり落ちた。
「あなたのところにお嫁に来たの?」
 椅子に座り直したあたしは、鬼気迫る形相で反論する。
『あんたをヨメにした覚えはなーーーい!第一、あたしは女だぁーーー!』
「あはは、やっぱりかすみはからかい甲斐があるぅ!あらためてよろしくお願い出来るかしら?」
 あたしは机に両肘をつき、両手で頭を抱え込んでしばしそのままの姿勢で呆れかえっていた。焦れたお雪がパソコンのスクリーンの中から怒鳴る。
「こらー、無視するな。わたしの事をどう思ってるのか、ちゃんと答えなさーい!」
 もうあたしはツッコミを入れる気力もなくしていた。力ない手つきでパソコンのキーボードに打ち込む・
『ああ、はいはい……愛してるわよ。お雪』
 するとお雪は二頭身の体をこれでもかってぐらいそっくりかえらせて、偉そうに。
「よろしい!」
 まったくもう、感動の再会がこれかよう!
 これからの事は翌日ゆっくり話すことにして、一旦お雪のプログラムを終了させ、ノートパソコンを閉じる。