ボーカロイドお雪

 後片付けをしながら彼を見ていると、見逃せない展開が起きていた。公園にさっきからいた若い、二十歳ぐらいの三人組の女性がいた。服装も化粧も派手で、ロックバンドの追っかけギャルによくいそうな連中。今日のあたしともろにキャラがかぶっているじゃん!と思って気になっていたのだけど。
 そのうちの一人が彼に近づいたんだ。後の二人は少し離れた場所からニヤニヤ笑ってそれを見つめている。どうやら彼を逆ナンしようとしているらしい。
 えーい!ふらち者。あたしの憧れの人に近寄るでなーい!あたしは心臓がバクバクするのを感じた。
 もし彼が派手でワイルドな感じの女の子が好みなら、あの女の人にはかなわないかも。ひょっとして、なんて事も……
 でもそれは起こらなかった。既に公園を去りかけていた彼は、その女の人に声をかけられても返事すらしないでそのまま何事もなかったかの様にスタスタと歩いて行ってしまった。
 その女の人は一転、本性を現して、足で公園の手すりを蹴飛ばしながら毒づく。
「なにさ!無視かよ!ちぇっ、気どりやがってさ」
 それから仲間二人の所へ戻り、そろってプンプンしながら公園から出て行った。
 うーん、やっぱりワイルド系は間違いか。それに大人のオンナは趣味じゃない?彼の正確な年齢は知らないけど、見たところ高校を出たばかりぐらいに見える。多分まだ二十歳にはなっていないだろう。
 それにあの派手な女の人、性格は悪そうだったけどけっこう美人で色気もあった。それに鼻もひっかけない、という事は年下の少女の方がお好みという事?
 よーし!だったら次は女子高生の色気で決まりだね。あたしだって華の十代。さっそく次のライブの用意だ。