「さっき図書館でDVD借りてきたんですけど、今観てもいいですよね」


焦ったふうでもなければ、いつものマイペースさが崩れているわけでもない。
ニュース番組を意図的に遮ったみたいだったが、そういうわけではなかったようだ。
聖は、直姫の後頭部を見たままで言った。


「え、いいけど」
「なんのDVD? 映画?」
「んーん、ライブ」
「日本のロックなんて聴くんだな、直姫。なんだか意外だ」
「そうですか?」


言葉を交わしながらも手は止めず、慣れた手付きでDVDプレイヤーの準備をすると、コーヒーカップを片手にソファに座り直す。
とてもこの春入ったばかりの一年生とは思えないくつろぎっぷりに、聖が書類整理の作業は手伝ってくれないのかと嘆く。
それをすっきりと無視して、直姫はリモコンを操作した。

大画面が、目が痛くなりそうなカラフルな照明の点滅を映す。

広いコンサート会場に臨場感溢れる、孤独なようで周りを支えに活きている、ギターの単音。
暗闇のスポットライトに浮かぶ、スリーピースのガールズバンド。
ボーカルのドラマーは、少年のような、少女のような歌声を上げた。

スピーカーから流れる、三拍子と雨の歌。
それがなぜかやけに、現実味を伴っていた。