6月中旬、とでも言う頃だろう。

入部してから1ヶ月を過ぎたところだ。

部活の基本的な流れはわかった。

朝からコート整備。放課後には準備運動、ストローク、ボレー、スマッシュ、サーブ、ラリー。あとコート整備。

たまに変わることもあるが、基本的にはそんなとこ。

それがコートの上で出来るのが楽しい。

だが、それは晴れの日のこと。

今日は雨。今は放課後。

今は使われていない剣道場での練習では、ラインがわかりにくくて辛い。そして狭い。

体育館なら広いんだが、バドミントン部やらバレー部やらが使っている。

せめて広いところでやりたいもんだ。

「雨って嫌だな」

「だっからハーフは」

「うっせぇ、バカにすんな」

詰まらないからと言って、野口に話す俺がバカだった。

決して周りの奴らは嫌いな訳ではないが、そういう言われ方は嫌だ。

「岩田」

「何さ?」

「雨って嫌だよな」

「えっ?」

岩田の目が見開いた。雨好きなのか。

「じゃあ、傘忘れた女の子見たらどう思うよ?」

「可哀想だな」

他人事のように言ったことに腹立てたのか、岩田は高須を呼んだ。

「一志、傘忘れた女の子見たらどう思う?」

「一緒の傘に入れて、送ってやろうと思う」

ロマンチストかつ、紳士的な奴だ。

「雨に濡れてスケスケな服から覗く…」

「「黙っとけ」」

岩田の発言は中止した。

だが、その発言を聞いていたらしい人が他にもいた。

「へ~。紅祐、そういうの好きなんだぁ」

「ひなたっ」

天音はニヤニヤして聞いていた。

かと思えば、急に外へ飛び出した。

「ひなた、待った」

岩田も追い掛けるように飛び出した。

2人はいつの間にか下の名前で呼ぶようになっていた。というより、下の名前で呼ぶ主義らしい。

どんな主義だよ。

「ってか部活どうすんだよ」

「どうするんだろうな」

高須の答えは適当だ。

上甲と和島は何故かあっちむいてホイやってるし。

外に出た2人が戻ってきた。

岩田が天音を背負って。

「何やってたんだよ」

「雨に濡れちゃったみたいだよ」

明らかに故意だろ。