「惚れたね…」



隣の飛鳥がそう呟く。



惚れた!?



「すいません。総務部はどちらですか?」

「右のエレベーターに乗っていただきましたら、3階になります。」

「ありがとう」



会社に来たお客に笑顔を振りまきながら飛鳥の言った言葉を考える。



アタシが春輝に惚れた!?



春輝は小さいバーのオーナーだよ!?



お金なんてそこそこしかないでしょ…。



「ナイ。」



アタシは飛鳥にそう返す。



「じゃあそのマスターに彼女ができたら?」



彼女…



春輝の彼女。



イヤ。



「別に…」



アタシは飛鳥にそれしか言えなかった。



アタシは恋なんかしないはず。



だって愛を知らないから。



あれはお酒のせいだよ。