嘘の噂が流れるのだけは、どうにかして避けたいわ。


「年下の甘えくらい聞いてよ、ね?先輩」

「こういう時だけ年の差を利用しないで」

「なら、俺の言うこと聞きながら散歩する?
首輪とか付けて」

「あたしは、恋千くんのペットじゃないの!」



強めの口調で言って腕を振り払うと、予想以上に簡単に外れて


「…ごめんなさい」

笑顔が消えた恋千くんに、気づけば謝罪。

いつもなら文句を言ってすぐ終わりなのに、なんでだろう。


「あ、そう。
すずも俺のこと捨てるんだ?」

「え?」


空気が、いつもと違ってた。

“すずも”って、どういう……


「くだらない。
早く課題を済ませに行きましょう」


心の中にもやもやと生まれた疑問。

結局、誠に促されて聞けなかったけど。



ただわかったのは、みんなには何かしら事情があるってこと。

その事情のために、洋館に来たということ。



「ごめん、なさい」



すっかりあたしから距離を置いた恋千くんに、もう一度そっと呟いた。