ありったけの笑顔で、返事をした。

簡単にはいかないと思うけど、不登校をどうにかできないかしら。


「授業は面白い?」

「うーん…あたしには難しいかも」

「お昼ごはんは美味しい?」

「それは、とっても!」



次々に来る質問に1つずつ丁寧に答えて。

これだけ学校に興味があるなら、人間克服だってできるんじゃないかと思っちゃう。


「佐久間さんも学校に行けば、楽しさがわかるんじゃない?」

トントンとリズムを刻む包丁。

グツグツと泡を作る鍋の中の熱湯。


何気なく言ったつもりだった。

動作を止めて佐久間さんに視線を向けると、さっきまでの笑顔がない。



「……ぼくは学校嫌いだから」


小さな呟きに、あたしは何を答えればいいの?


「ヒメにはわからないだろうけど、人間は怖い生き物なんだ」

「人間は……怖い」

「そう、」


もしあたしが立派な魔法使いで、もし課外授業中じゃなかったなら

今この瞬間、心の闇を払ってあげられたかもしれないのに。