実際、あまり効果はないけど。
「あーぁ、残念。
先輩をいじめるのが最近の楽しみなのに」
嫌味と黒さを含んだ口調が、やけに大きく響いて聞こえた。
「ホタルも部屋に戻りな。
すずが困ってる」
そして、続けて話す里音の声はもっと響いているみたいだった。
無事、なんとか逃げることができたあたしはエプロンをつける。
恋千くんから躊躇いがちに受け取る瞬間、恐怖心を抱いたのは嘘じゃない。
佐久間さんには、約束を守れなかったことを謝罪。
はぁ……これで、ようやく夕飯の支度ができるわ。
少しでもお腹がすくと、愛琉さんが不機嫌になるから急がなきゃ。
唯一誰にも邪魔されないキッチン。
料理ができるまでの間、みんなはほとんど自室にいる。
寝てる人もいれば、課題をやったり読書したり、それぞれの自由な時間なんだと思う。
テレビという四角い機械は1つしかないから、テレビを見たい時には数人が集まったりして。
エシャルではテレビがなくて、映像は光の魔法を使って作り出すものなの。
だから、人間界に来てテレビを見た時は技術に驚いたものだったわ。


