「あ、ちなみにね、洋館のみんなは人間界での初めての家族よ」
前方に現れてきた大きな自宅。
同じ場所に住んでる人たち。
それってつまり、家族よね?
「……幸せな頭の構造してんだな」
「え?」
ただ嬉しくて話していただけなのに、やっと口を開いた愛琉さんの声音は冷たくて。
「バカなおまえに1つだけ忠告してやる。
あいつらの前で、家族の話なんかすんな」
「なん…で……?」
足早に自室へ向かう彼に、あたしの問いかけは届いていないみたいだった。
何を伝えたいのか、考えてみるけどわからない。
家族の話をしたらダメ?
どうして?
「おかえり、ヒメーっ!」
「どうやら、ちゃんと帰ってこれたみたいですね」
洋館の扉を開けると、鈴の音が可愛らしいメロディーを奏でる。
迎えてくれた佐久間さんは早々に抱きつきに来てくれて、誠は本を片手に階段からこちらを見下ろしていた。
「ヒメ、会いたかったよー。
ずっと待ってたんだ、帰ってくるの」


