「じゃーん!」
再び両手を自信満々で広げた瞬間
───♪〜
耳に入ったのは、来客を知らせるオシャレなメロディー。
全員の視線が、カーテンの開いた大きな窓から見える門に向けられて。
お盆をテーブルに載せたあたしに、佐久間さんがしがみついてきた。
「すず、出ろ」
相変わらずの命令口調で愛琉さんが言う。
仕方なく玄関へ向かおうとするものの、行動を阻止する錘が。
「ヒメ、ヤダ。
人間怖い、呼んじゃダメ」
ここにきて、佐久間さんの人間不信が出てしまったらしい。
服を握りしめている手を優しく握って
「大丈夫よ」
安心させるように告げてから、スルリと錘をかわして玄関へ向かった。
「あ、すず待って───」
呼び止める里音の声がしたけど、急いでいたから頭に入らない。
後から聞いた話だけれど、人間界ではインターフォンという便利な機能があったのね。
知らずに、そのまま来客を家の中まで案内してしまったわ。


