眠そうに目をこすりながらの質問に、慌てて掃除道具を持った。
「今すぐ作るから、待ってて!」
半ば逃げるという目的もあったけれど。
「できたら呼びに来るわね」
まだ残ってる家事を考えたら、時間を無駄にするわけにはいかない。
恋千くんの部屋を突風の如く飛び出した。
階段を駆け下りてキッチンへ向かう。
バタバタと響く足音を抑えるのも忘れて。
お昼ごはん、どんな料理がいいかしら。
また失敗したら困るし、簡単なものがいいわ。
いっそのこと魔法で作るのもありよね。
……呪文を間違えなければ。
「すず、そんなに慌ててどうした?」
キッチンへ到着すると、すでに先客が。
冷やしてあった麦茶をコップにそそぎながら、あたしに気づいたらしい里音。
「お昼ごはんを作ろうと思って」
歩み寄りながら答えて。
「けど、あたし料理下手でしょ?
本を見て作っても、どこかで間違えちゃうみたいなの」
いつもキッチンに置いておく料理本を手に、息を吐く。


