遠くを見つめて、懐かしそうに話し出す琴葉ちゃん。


「姫様ったら、目を離したら危ないことしかしなさそうなんだもん。
だから、お祖母ちゃんに頼まれて私が姫様の監視をしてたの」

「監視?」

「気を悪くさせたら、ごめんね。
でも、外を出歩いてる時に陰から見守ってただけだよ」



見守ってた、って。

また脳内がぐるぐると回って、新しい回路を見つけ出す。


理解できた瞬間、ほっとして肩の力が抜けた。

なんだ、外出時に感じていた視線の主って琴葉ちゃんだったんだ。



「どうしたの、姫様?」

安心から息を吐くあたしに、琴葉ちゃんは不思議そうな表情。


髪型もお化粧も、話しているうちに全部終わって。

もうすぐ、あたしの歓迎会パーティーが始まる頃。


最後に琴葉ちゃんにお願い事をしたら、また新たな事実が見つかってしまったの。


「姫様って呼ぶのやめてもらえない?
あたし、琴葉ちゃんからは楼那さんって呼ばれるほうが落ち着くの」

そんな話をして、何気なく琴葉ちゃんにエシャルでの名前を尋ねた時だった。


「私の名前は、オーミ・アヴァルア」


フラッシュバックする記憶。

使い魔の導きたる、という本と“オーミ・A”という筆者。


琴葉ちゃんは、エシャルで首位を争うほどに魔女として高位な存在だった。