歪みの中から眩い光と共に現れたのは、エシャルへ続く魔法の入り口。

ここをくぐれば、次の瞬間立っている場所は自分のいるべき国だ。


本当に、本当にこれで終わり?

半年という期限が過ぎて、課題が終われば人間界とはさよなら?


そんなの、あまりにも呆気ない。

あまりにも、悲しい。



「アヴァルア校長先生、課題の答えって何なんですか」

いてもたってもいられずに、あたしは答えを求める。


「この課題はね、重要なのは“幸せ”を探すことではないの。
“幸せ”と向き合うことなのよ」

真っ赤な花びらが、風に煽られ宙を踊る。


「姫という地位に立つ以上、自分が常に幸せであることを忘れてはいけない。
それをベル、あなたのご両親は教えたかったの」

空間の歪みが、さっきよりも大きくなる。



あたしは視線を足元へ落とした。

「課題が終わったら、もう人間界には来れないのですか」


口を閉ざしたまま、アヴァルア校長先生は高いヒールの音を鳴らして近づいてくる。

顔をあげて、有りっ丈の想いをぶつけた。


「お願いします。
あたしは人間界が大好きなんです。
これでお別れなんて嫌なんです。
わがままだって理解してるわ、だから何だってする。
お姫様としても、ちゃんとエシャルを守っていくから」