冗談よね?

まさかね、冗談よ。

落ち着きを取り戻したくて、自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。



あたしの予想を裏切らず、彼女は杖を出現させて。

本当に……魔女なの?


煌びやかな長い杖を振りかざすと、琴葉ちゃんは本来の姿に戻った。


アヴァルア校長先生と同じ、桃色の髪。

普段の彼女からは感じられなかった、強力な魔力の気配。


同時に、鈴からも大きな魔力を感じた。



ますます理解できなくなってきちゃったわ。



「ところでベル、“幸せ”は見つかったかしら?」

え、いや、あの、今はそれどころじゃ……


こちらの動揺なんてよそに、話は着々と進められていく。


「ごめんね、詳しいことはあとで言うから」

琴葉ちゃんに耳打ちされて、頭を悩ませながらアヴァルア校長先生へと向けた瞳。



「……わかりません」

断言して、一歩前に出た。

ひとまず、今は質問に答えようと思うの。



「わからない?」

「えぇ、幸せなんてありふれてるわ。
それに人によって形を変えるでしょう?」