本当に嬉しくて嬉しくて。
久しぶりに杖を握って、大きく振るこの感覚。
あたしは、やっぱり魔法使いだ。
杖の動きに合わせて、ものが移動し始める。
開いた窓の外へと部屋の空気は抜け出して、新鮮な空気が入り込む。
隅に隠れていた埃はゴミ箱へ。
この際だから、ついでに床も磨いちゃおう!
そう調子に乗ったのが、間違いだったみたい。
「あっ、今呪文を間違えちゃ───きゃっ!」
杖の先から勢いよく風が巻き上がり、壁に反射してあたしを突き飛ばす。
反射を続ける鋭い風は部屋中を撒き散らして、宙にすっと消えっていった。
「あ.あのっ、ごめんなさい。
今すぐ元通りに───」
「結構です」
「っ、でも」
バラバラになってしまった本。
幸いにも、水の呪文が混じってなかったおかげで大惨事は免れたけど。
もし本が濡れちゃってたら、大変だったわ。


