信用していないわけじゃない。
それでも、不安がないわけじゃない。
難しい決断だわ。
集まった埃をゴミ箱へ捨てて、綺麗になった床を見つめる。
不意に音がして顔をあげると、誠は立ち上がって本を棚に戻していた。
「他の人たちを信用できないのなら、僕の部屋でだけ魔法を使えばいい」
「え?」
「それから、お風呂場やキッチンは人がいないから見られず魔法を使えます」
今まで手にしていた本を並べると、今度は別の棚に並べられた本を開く。
椅子に座って足を組むと、本へと視線を落としたまま
「他人の面倒で、自由な時間がなくなっては“幸せ”を探す暇もないでしょうし」
告げられた言葉に、心が温まる気がした。
「本当!?
じゃあ、遠慮なく使わせてもらうわ」
キラキラと光を放ち、手元に現していく杖。
「誠、ありがとう!
とっても優しい人なのね」
満面の笑みを向けると、本のページが捲られる。
「一刻も早く、あなたに帰ってほしい。
課題を手伝うのは、そのためです」
「でも嬉しい、ありがとう!」


