「ねぇ佐久間さん、何かほしいものとかある?
できれば、お金のかからないもので」

「うーんとね、ヒメが作るハンバーグが食べたい」

「料理ね、任せてっ」


勢いよく佐久間さんの部屋を出て行く。

そして広い階段ですれ違った恋千くんを引き止める。



「恋千くん、何かほしいものある?
できれば、お金のかからないもので」

「いきなり、どうしたわけ」

「いいから答えて」


急な質問に少し悩んで、あたしの様子を窺うように目を向けてくる。



「えへへ、決まった?」

満面の笑みで返事を促すと、今度は目を逸らしたまま。


「すずに、ほっぺにキスしてもらいたい」

その言葉を聞いて、少しだけ考える。

それから、背伸びして恋千くんの頬に口付けた。


「はっ!?」

顔を真っ赤に染めて驚く恋千くんに、急いでるからと伝えて早足に下りた階段。



次いで、玄関から誰かが入ってくる音。


「ちょうどよかった。
ねぇ誠、ほしいものを教えて」