「人間ってのは、欲深いからだよ」

「欲深い?」

「ひとつ幸せを感じると、また別の幸せを求める。
それが繰り返されるから、絶対に幸せは永遠には続かない」


必死に脳内で理解しようと試みる。

突然、難しくなりすぎじゃない?



「欲が満たされた一瞬だけ、人は幸せになれるんだ」


最後にそう言うと、そのまま後ろに倒れ込んだ。

愛琉さんのお腹の上で、鈴が鳴き声をあげる。


あたしもベッドに寝っ転がろうと後ろに倒れていくと、すぐ近くで愛琉さんと目が合った。



ベッドに体が沈んでる。

それも、他のみんなのよりふかふかのベッド。


ひょっとして、愛琉さんのだけ高級品なの?


あまりに居心地が良くてウトウトしていると、愛琉さんの手が頬まで伸びてきた。


「痛っ…!」

頬をつねられた衝撃で、一気に眠気が吹っ飛んでしまう。


「寝るなら、さっさと自分の部屋戻れ」

怒られてしまい、慌てて部屋を出ようと立ち上がる。


扉を閉める際に愛琉さんへ視線を投げると、お腹に乗る鈴に優しい表情を向けていた。

“すず”と“鈴”で、こんなに態度が違うなんて、なんだか不平等だわ。