「──ということでね、話を聞かせてほしいの」


ベッドに座って、あたしの言葉に耳を傾ける里音。

彼の横に座ったあたし。



「“幸せ”の正体か……そうだな」

「里音が幸せだなって思うのは、どんな時?」

「みんなが笑ってる時」


後ろ手をついて、遠くを見たまま即答される。



暖かな赤味のある照明が、優しい空間を作り出していた。

それはまるで、いつも優しい里音そのものみたいで。


「すずも、愛琉も恋千も、誠もホタルもみんな笑ってたら、オレは幸せ」

そう語る口調も、とっても穏やか。



「あたしたちのことばっかりで、自分のことは望まないの?」

覗き込むように彼を見つめると、一瞬だけ悲しそうな笑顔。


「…できれば弟にちゃんと謝りたい。
ずっと、謝れてないんだ」

あたしは、里音から自分の手元を見るように下を向く。


里音の弟。

新しい家庭があって、“家族”と一緒に暮らしている。


「弟の名前、なんていうの?」