エシャルに帰るまで、残り一週間。

学校では、転校手続きが行われた。


といっても、あたしがやるわけじゃない。

エシャルに関しての事情がバレることを防ぐため、事前にアヴァルア校長先生が魔法で済ませてくれたの。



月明かりが街を照らす夜。

夕飯を食べ終えて、それぞれが自由な時を過ごす刻。


あたしは、落ち着かずに思案していた。


幸せってなに?

目的である幸せの答え、まだちゃんと見つけられてない。



リビングのふかふかのソファーに深く腰掛けて、膝の上には黒猫。

喉を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めて鳴いた。


「あなたは、幸せ?」


尋ねると、無言のまま手に頬を寄せてくる。



あ、そうだわ。

“幸せ”の正体をみんなに聞いてこよう。


きっと、あたしの気づかなかったことが見えてくるはずだもの。




「ごめんね」

黒猫に一言断って、膝の上から下ろして立ち上がる。



まずは、誰の部屋から行こうかしら。