光るテレビ画面に照らされながら、ふと話し出したのは里音。

相変わらず、定位置はベッドの上。


「数ヶ月前じゃ、考えられなかったな」


静かに響く声が落ちて、あたしは彼を見つめた。


「オレたちに混じってすずがいることも、ホタルの部屋に全員が集まってることも」



数ヶ月前。

それは、突然だったの。


「そうね、あたしも考えられなかった」

人間界に行くことを知らされた時、不安と期待が胸いっぱいに溢れていた。


「ヒメが“ここ”にいる間に、たくさん思い出作ろうね」

隣の佐久間さんの声に、無言で頷く。


半年間なんて、あっという間だと思ってた。

けれど、本当は案外長い時間なのかも。

この長い時間の中で、あたしたちはお互いを知ることができたのよね。



「おいで」

恋千くんが手を伸ばした先に、行儀よく座る黒猫一匹。

ベッドにあがると、すぐに恋千くんのそばに落ち着いて。



あたしがエシャルに帰ったら、きっとあなたも自分の国に帰るのね。

心の中で、こっそり黒猫に話しかけた。