あたしがそこまで言いかけた瞬間、背後からキィッと軋むような音。

瞬時に身を硬直させて、心臓は反対にドキドキと脈を打つ速度を上げる。



ひょっとして、幽霊が?

この洋館にも出るのかもしれない。


目を半分ほど細めて視界を狭めると、あたしはゆっくりと振り返った。



「きゃぁぁぁあああっ」

思いがけず、予想だにしていなかった大きな悲鳴。

悲鳴をあげたのは、他でもない自分だ。



開いた扉から遠ざかるように、3人のうしろへと隠れて。


「ゆゆゆゆゆっ幽霊」

必死に声を出す。



顔の前を両腕で防御したまま、下を向いていると

「黒猫を探した時には、幽霊を怖がっていたようには見えませんでしたが」

耳に届く呆れた声。


あれ?

この声って………



身動ぎしない3人の隙間から顔を覗かせて、声の主を見つめる。


あたしの横を素早くすり抜けていった恋千くんが、一番に驚愕して声を発した。


「うっわ、どうしたわけ。
ってか、その傷なに?
まさか力ずくで説得したとか」