「おかえりなさい!」

和室に、布団を敷いてその上に寝そべる。


魔法の本を開いて見ていると、会いたかった人が帰ってきた。


せっかく声をかけたのに、相手は固まったまま。

その次に、怪訝そうな表情で少しだけこちらに近寄ってきた。



「人の家で、何をしているんです?」

「見てわからない?
本を読んでるの」


呆れた様子の誠に、あたしは続けて言う。



「ねぇ、本当にいいの?」

洋館に戻れなくて、それでもいいの?


短い言葉だけでも、誠は悟ったように頷いて返事をした。


「本当に、本当に?」

「あなたの言いたいことは、それだけですか?」


繰り返し尋ねられるのを嫌がるように、逆に質問を投げかけられて。


「ご両親だって、ちゃんと話せばわかってくれると思うの」

質問に答えるのを飛ばして、言いたいことだけを述べる。


「仕方ないなんて言葉で片付けないで。
誠には、選ぶ権利があるのよ。
洋館にいたいなら、そう伝えればいいじゃない」